『先崎学の実況! 盤外戦』

『先崎学の実況! 盤外戦』 先崎 学 講談社文庫
 プロ棋士の本といえば、囲碁や将棋の指南書が殆どであるが、本書は棋士が書いたエッセイである。

ナンプレファンに掲載されたエッセイを中心に文庫書下ろしも収録されている。先崎氏のエッセイは洒脱でちょっと面白い文章である。どんな文を書いているかというと、「降りゲーの楽しみ」を読んでみると

 テトリスに限らず、あらゆる降りゲーというのは、最初は潤沢に空いている空間
が、徐々に詰まってゆき、上までスキ間なく詰まってエンド、となる。はじめは順調
にいっていたのに、気がつくと詰まり出す。その時の焦る感じ、「ウオォォ」となっ
ているのに次から次へと降ってくる。その時、私の中の隠れたマゾ体質が爆発する。
すこしずつ首を絞められる疑似体験のようなものが不思議と気持がいい。
 そこへ突然都合のいい物が降ってきて、あれよあれよという間にピンチを脱出す
る。この間の時間が実に気持がいい。降りゲーの楽しみのすべてはここにある。順調
な時にはさほど楽しくないのに不思議なものである。
 降りゲーには、勝負に重要な要素が詰まっている。
 降ってくる物の処理を誤る。いかん、と思った次、ここが肝心である。後悔が尾を
引いて、つづけて失敗してしまうというのがよくあるパターンで、これがまずい。
 将棋には「悪手が悪手を呼ぶ」ということばがある。悪手を指すと、精神が動揺し
て、次も悪手を指しやすいのである。そして、それは致命傷となりやすい。
 降りゲーにもこれがあてはまる。しまった、と思ったら、そのことを忘れて立ち向か
うのがよい。「現在最善を尽すべし」ということばが大事である。大事なのは常に現
在で、一手前を引きずってはいけないのだ。
 失敗が重なって、いよいよピンチ、という時に大事なのは、深呼吸である。とりあ
えず深呼吸をして、冷静になろうと努力してみる。今現在、局面がどんなに火を吹い
ていても、いや火を吹いているからこそ、深呼吸をしてみるのである。
「ピンチの時には深呼吸」これは、あらゆる勝負事の鉄則である。あくせく血眼にな
るよりも、かえって助かるばあいが多いのだ。
 こうして考えると、たかが降りゲーでも、私のばあいずい分本職と重なった部分が
あるものだ。もっともプレイしている時にそんなことは考えない。ただただ楽しいだ
けである。

という感じである。ちょっとした息抜きの遊びの中にも教訓めいたものを見つけ出すことができ、いろいろと応用がきくことであろう。

さて、ナンプレファンに連載されたタイトルの中に「将棋VS.囲碁」というのがある。どっちが難しいのか、先崎氏の奥様は囲碁棋士とのことで家庭の中でどっちがどう強いのか。奥様は「そんなもの勝負をつけるものじゃない」と一蹴されたとか。

最後の森博嗣氏との対談でもコンピュータ将棋とコンピュータ囲碁の話がでてくる。将棋指しは理系だという。論理的に考えて、道筋を辿っていくところが理系ということなのだろうか?

将棋のコンピュータプログラムは、将棋のプロ並になってきているようであるが、プロの上をいくのはもう時間の問題なのかも知れない。ただ、新しい手を編み出せるのかというと、それはコンピュータに向いていない。多数の数知れない手順をどうやってこっちが有利でこっちは無いと複数の選択肢から選ぶ優先順位のつけ方が、コンピュータにプログラムするところが難しいのだ。オセロは8x8の盤面の位置によって、その位置を占めることに絶対的な優位性があるので、割と早くから強いプログラムができた。チェスは、スーパーコンピュータで世界チャンピオンに勝てるところまできた。チェスは取った駒は原則再利用されない。ポールが最前列に達したら別の駒に変身できるくらいだ。しかし将棋は、取った相手の駒を自分の駒にできるので、
いつまでたっても勝負がつかない可能性もある。盤面が19x19と広い囲碁は選択肢が多いので、コンピュータ囲碁はまだプロレベルにはいってなくアマ有段者のあたりである。しかし、囲碁は交互に石を打っていき石で盤面が埋まっていくと置いて陣地を増やせる可能性のある場所が少なくなっていくので、終盤戦になるとコンピュータは全ての手を読みきって最善の手をさせるので、プロの勝負でもコンピュータが先に読みきることが可能になってきた。中盤戦をどう闘うがが勝負の分かれ目ということろか。今のスーパーコンピュータがパソコン並のサイズに収まるようになれば、囲碁もプロレベルになるかも知れない。ただ、多数の選択肢から優先順位をつけるアルゴリズムの開発なくしては、強くなれないだろう。






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