『計算機と脳』

『計算機と脳』 J.フォン・ノイマン ちくま学芸文庫
 コンピュータの原理について勉強するとたいていでてくるのが「ノイマン型コンピュータ」というやつ。その名前の由来になっているのが、このJ.フォン・ノイマン氏だ。戦時中にアメリカ軍で弾道ミサイルの軌道計算の為に開発していたのがノイマン氏たちだ。

この本は、計算機の研究をしていたノイマン氏がイエール大学で行う予定だったシリマン講義に向けて書かれた原稿を出版されたものである。講義を目前にして病床に倒れそれでも原稿の執筆のことが頭から離れなかったノイマン氏の様子は冒頭の奥様による「はしがき」に詳しい。

本文は2部構成になっており、第1部は計算機、第2部は脳について書かれている。第1部はアナログ計算機とディジタル計算機をその仕組み論理、特徴について述べている。第2部は脳の話で神経、シナプス、インパルスなどについて言及されている。現在の計算機の基本的な部分、脳の動きの基本的な部分についての記述は最初の取っ掛かりとしてきちんと書かれているので参考になる。

当時のコンピュータでできることよりも、今の手のひらサイズのスマホでできることの方が圧倒的に能力が高いが、動作原理とすれば、この本で解説されているディジタル計算機となんら変わるところがない。それがノイマン型コンピュータという所以だ。プログラムどおりに順番に実行される。今の計算機は、並列処理ができるように工夫されているので、一見全然違う原理で動いているような錯覚を覚えるが、結局は、一つ一つのプログラムは逐次処理になっているので、ノイマン型を超える事はない。アナログ計算機はプログラムをアナログ回路に実装するので、処理速度は速いが、プログラムを変更しようと考えたら、いちいち回路を組みなおさないといけない。ディジタル計算機は、プログラムをソフトウェアで保持しているので、そのソフトウェアを書き換える事で別のプログラムを実行できる。複数のプログラムを取り替えながら実行することを考えるとディジタル計算機のほうが便利である。

 計算機と脳を直接比較するという論文は現代でもそう多くはないだろう。計算機が人間の脳の代役になるのかの研究は、ノイマン氏の研究の後60年たった今も研究されているが、研究し尽くしたという事ではまったくない。脳の研究は、まだまだ判らないことも多く、研究は続いている。あの時代でもシナプスとシナプス間を伝播するパルスによって、情報が伝わり、その伝わり方によって思考する。ということは判っていたようだ。パルスがあるか無いかによる所はディジタル的でもある。パルスが強いか弱いかについてはノイマン氏は触れていない。パルスの強さに着目するとその部分はアナログ的でだと判っただろう。
さらに、脳は、生きているので自分で自分の回路を変更することができる。より簡単に素早くできるような回路を作り出すことができる。これが学習というものである。
つまり、シナプスのどれとどれが結ばれるかについては動的に変化するアナログ回路のような物である。脳はアナログ的な要素とディジタル的な要素の組み合わせでできており、なかなかに複雑なものである。脳のような思考をするコンピュータを作ろうとする試みは現代も延々と続いている。それは計算機の研究と脳の研究の双方の相乗効果によって発達しており、推論マシンは、コンピュータの処理能力の向上に伴って発展している。推論マシンは、間違った結果をだしたら、それが間違いだと記憶し、正しかったら正しいかったと記憶を積み重ねる機能を組み込む必要がある。そうしないとその推論マシンを作ったときが最高の性能で、それ以上の性能を生み出すことはできない。

ノイマン氏の計算機と脳の比較で面白いと思ったのは、エネルギーの比較部分である。「人間の中枢神経系(脳)におけるエネルギー消散は、10ワット(W)程度だ」という。この後ノイマン氏は、脳のニューロン一つと真空管やトランジスタ一つのエネルギー消散を比較して天然の素子は人工素子の1~10億倍優れていると言っている。現在の人口の素子はもっと細かくなっているので、差は縮まっていると思う。小生が比較したいのは、脳全体でたかだか10Wという部分だ。現在のコンピュータに使われているプロセッサは、かなり消費電力が大きい。デスクトップパソコンのプロセッサだと100W前後。サーバ用途だと200W以上だ。消費電力の小さいのはモバイル向けだIntelのスペック表によると一番小さいので11Wというので、このくらいのプロセッサ1個が人間一人分の脳の消費エネルギーに相当するということのようだ。チェス、将棋、囲碁でコンピュータ対人の対決をやっているが、コンピュータもこのくらいのプロセッサで対戦してもらいたいものだ。










ノイマン・コレクション 数理物理学の方法 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房
J.フォン ノイマン

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