『深層学習教科書 ディープラーニング G検定 公式テキスト』
『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』
(監修)一般社団法人日本ディープラーニング協会
(著者)浅川 伸一,江間 有沙,工藤 郁子,巣籠 悠輔,瀬谷 啓介,松井 孝之,松尾 豊
人工知能のひとつの分野であるディープラーニング。日本ディープラーニング協会が、検定試験を2種類実施していて、その内一般的な知識を問うのがG検定(ジェネラリスト検定)である。
試験の教科書をあえてここに取り上げたのは、内容が充実していてディープラーニングの知識を得るには記述の範囲も適切で面白そうな章だけつまんで読むのもためになりそうだからだ。
試験を受けない人も人工知能に興味があって社会の中でどのように活用されているのかを知りたい人は読んでみるとよい。
「人工知能とは、そもそもどんなものを指すのか?人工知能の研究開発の歴史」に始まって、「人工知能の動向」と導入部は一般的な知識が得られる。
3章では、さらに核心になり、人工知能分野の問題とは何かが解かれる。
この中から、「フレーム問題」を取り上げてみたい。
フレーム問題は、1969年にジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズが
提唱した人工知能における重要な問題です。未だに本質的な解決はされて
おらず、人工知能研究の最大の難問とも言われています。
フレーム問題は、「今しようとしていることに関係のあることがらだけ
を選び出すことが、実は非常に難しい」ことを指します。哲学者のダニエ
ル・デネットは次のような例を用いてこのフレーム問題の説明をしています。
洞窟の中には台車があり、その上にはロボットを動かすバッテリーがあ
りますが、その横に時限爆弾が仕掛けられています(図~省略~)。ロボットは
動くためにバッテリーが必要であるため、洞窟からバッテリーを取ってく
るように命じられます。
ロボット1号は、洞窟からバッテリーを取ってくることに成功します
が、バッテリーを持ち出すと爆弾も一緒に運び出してしまうことを知らな
かったため、時限爆弾も一緒にもってきてしまい、爆弾が爆発してしまい
ます。
そこで、ロボット2号を作りました。ロボット2号は、爆弾も一緒に持ち
出してしまうかどうかを判断できるように、「自分が行った行動の結果、副
次的に何か起きることを考慮する」ように改良されました。するとロボッ
ト2号はバッテリーを前に考え始め、「もし台車を動かしても、洞窟の天井は
落ちて来ない」「もし台車を動かしても、洞窟の壁の色は変わらない」「も
し台車を動かしても、洞窟の地面に壁に穴があいたりしない」……と、あり
とあらゆることが起きる可能性を考えたせいで時間切れになり、爆弾が爆
発してしまいました。
そこで、さらにロボット3号が作られました。ロボット3号は、「目的を遂
行する前に、目的と無関係なことは考慮しないように」改良されました。す
ると、ロボット3号は関係あることとないことを仕分ける作業に没頭して
しまい、無限に考え続け、洞窟に入る前に動作しなくなってしまいました。
「洞窟の天井が落ちてこないかどうかは今回の目的と関係ある
だろうか」「壁の色は今回の目的と関係あるだろうか」「洞窟の地面や壁に穴
があいたりしないかどうかは今回の目的と関係あるだろうか」……と、目
的と関係ないことも無限にあるため、それらをすべて考慮しているうちに
時間切れになり、自分のバッテリーが切れてしまったのです。
人間は、様々な経験から、目で見たコト、耳で聞いたコトなど五感から入力された情報が、今自分がやろうとしていることに関係あることかどうかを無意識に判断できてしまいます。
そのほとんど無意識に判断できているコトを人工知能に判断させるのが非常に難しいのである。
ある限られた条件の中で、ルールに従って動くのである。
ディープラーニングは、人工知能の中でも、そのルールを沢山のデータを元に自分で作り出して、ルールを計算モデルとして作り出すことができる。
与えられたデータが画像であっても、その画像を小さいピクセル単位に計算して縮小し、縮小したものを元に戻るように拡大して元に戻る計算式を作り出す。
そのようなことを、データの数だけ繰り返し、非常に大量の計算を行ってモデルを作る。
そうやって出来上がったモデルを活用すると、画像に写っているものが何かを判別できる。
このテキストの8章には、社会で既にディープラーニングが使われている事例が紹介されている。
少し抜き出してみると
・製造業
製造した製品の検品。不良品がないかどうかを見た目で検査する
・自動車業界
自動運転。車が前進したり曲がったりする時に進行方向に障害物がないか
どうかを瞬時に判断する。道路の道幅、車線を判断してはみ出さないように
する
・医療
内視鏡でのガンの発見。大腸内視鏡検査支援。眼底検査の網膜剥離箇所の検出
・インフラ検査
コンクリートのひび割れ検査。舗装道路の損傷判断
・小売・サービス
タクシーの乗客の需要予測。小売店舗の来場者の属性把握。
・農業
収穫時期の判定。害虫のいる場所を特定して農薬をピンポイントで散布
・Web販売
商品レコメンド。画像検索
・その他
チャットボット
既に様々な領域でディープラーニングが使われていることがわかる。
中には、ディープラーニングでなくても別の方式の人工知能技術(過去に開発されたもの/当時の人工知能や、新しい機械学習技術)によって実現されているものもある。
ディープラーニングの技術がますます発展して、少数のデータからも学習できるようになってくるとディープラーニング技術を使うコストも下がってさらに適用領域は広がっていくだろう。
(監修)一般社団法人日本ディープラーニング協会
(著者)浅川 伸一,江間 有沙,工藤 郁子,巣籠 悠輔,瀬谷 啓介,松井 孝之,松尾 豊
人工知能のひとつの分野であるディープラーニング。日本ディープラーニング協会が、検定試験を2種類実施していて、その内一般的な知識を問うのがG検定(ジェネラリスト検定)である。
試験の教科書をあえてここに取り上げたのは、内容が充実していてディープラーニングの知識を得るには記述の範囲も適切で面白そうな章だけつまんで読むのもためになりそうだからだ。
試験を受けない人も人工知能に興味があって社会の中でどのように活用されているのかを知りたい人は読んでみるとよい。
「人工知能とは、そもそもどんなものを指すのか?人工知能の研究開発の歴史」に始まって、「人工知能の動向」と導入部は一般的な知識が得られる。
3章では、さらに核心になり、人工知能分野の問題とは何かが解かれる。
この中から、「フレーム問題」を取り上げてみたい。
フレーム問題は、1969年にジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズが
提唱した人工知能における重要な問題です。未だに本質的な解決はされて
おらず、人工知能研究の最大の難問とも言われています。
フレーム問題は、「今しようとしていることに関係のあることがらだけ
を選び出すことが、実は非常に難しい」ことを指します。哲学者のダニエ
ル・デネットは次のような例を用いてこのフレーム問題の説明をしています。
洞窟の中には台車があり、その上にはロボットを動かすバッテリーがあ
りますが、その横に時限爆弾が仕掛けられています(図~省略~)。ロボットは
動くためにバッテリーが必要であるため、洞窟からバッテリーを取ってく
るように命じられます。
ロボット1号は、洞窟からバッテリーを取ってくることに成功します
が、バッテリーを持ち出すと爆弾も一緒に運び出してしまうことを知らな
かったため、時限爆弾も一緒にもってきてしまい、爆弾が爆発してしまい
ます。
そこで、ロボット2号を作りました。ロボット2号は、爆弾も一緒に持ち
出してしまうかどうかを判断できるように、「自分が行った行動の結果、副
次的に何か起きることを考慮する」ように改良されました。するとロボッ
ト2号はバッテリーを前に考え始め、「もし台車を動かしても、洞窟の天井は
落ちて来ない」「もし台車を動かしても、洞窟の壁の色は変わらない」「も
し台車を動かしても、洞窟の地面に壁に穴があいたりしない」……と、あり
とあらゆることが起きる可能性を考えたせいで時間切れになり、爆弾が爆
発してしまいました。
そこで、さらにロボット3号が作られました。ロボット3号は、「目的を遂
行する前に、目的と無関係なことは考慮しないように」改良されました。す
ると、ロボット3号は関係あることとないことを仕分ける作業に没頭して
しまい、無限に考え続け、洞窟に入る前に動作しなくなってしまいました。
「洞窟の天井が落ちてこないかどうかは今回の目的と関係ある
だろうか」「壁の色は今回の目的と関係あるだろうか」「洞窟の地面や壁に穴
があいたりしないかどうかは今回の目的と関係あるだろうか」……と、目
的と関係ないことも無限にあるため、それらをすべて考慮しているうちに
時間切れになり、自分のバッテリーが切れてしまったのです。
人間は、様々な経験から、目で見たコト、耳で聞いたコトなど五感から入力された情報が、今自分がやろうとしていることに関係あることかどうかを無意識に判断できてしまいます。
そのほとんど無意識に判断できているコトを人工知能に判断させるのが非常に難しいのである。
ある限られた条件の中で、ルールに従って動くのである。
ディープラーニングは、人工知能の中でも、そのルールを沢山のデータを元に自分で作り出して、ルールを計算モデルとして作り出すことができる。
与えられたデータが画像であっても、その画像を小さいピクセル単位に計算して縮小し、縮小したものを元に戻るように拡大して元に戻る計算式を作り出す。
そのようなことを、データの数だけ繰り返し、非常に大量の計算を行ってモデルを作る。
そうやって出来上がったモデルを活用すると、画像に写っているものが何かを判別できる。
このテキストの8章には、社会で既にディープラーニングが使われている事例が紹介されている。
少し抜き出してみると
・製造業
製造した製品の検品。不良品がないかどうかを見た目で検査する
・自動車業界
自動運転。車が前進したり曲がったりする時に進行方向に障害物がないか
どうかを瞬時に判断する。道路の道幅、車線を判断してはみ出さないように
する
・医療
内視鏡でのガンの発見。大腸内視鏡検査支援。眼底検査の網膜剥離箇所の検出
・インフラ検査
コンクリートのひび割れ検査。舗装道路の損傷判断
・小売・サービス
タクシーの乗客の需要予測。小売店舗の来場者の属性把握。
・農業
収穫時期の判定。害虫のいる場所を特定して農薬をピンポイントで散布
・Web販売
商品レコメンド。画像検索
・その他
チャットボット
既に様々な領域でディープラーニングが使われていることがわかる。
中には、ディープラーニングでなくても別の方式の人工知能技術(過去に開発されたもの/当時の人工知能や、新しい機械学習技術)によって実現されているものもある。
ディープラーニングの技術がますます発展して、少数のデータからも学習できるようになってくるとディープラーニング技術を使うコストも下がってさらに適用領域は広がっていくだろう。
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