『成熟脳』

『成熟脳 ~脳の本番は56歳から始まる~』 黒川 伊保子 新潮文庫
2月に紹介した『母脳』の続きみたいな本。

子育てがそろそろ終わろうかという56歳。脳は、まだまだ成長している。ここからが真価の発揮どころのようだ。

人の上に立つリーダー。リーダーシップにはいろいろあるが、こんな考え方もあるという。

上から目線のようで「べき論」を言いつのる、高飛車な人へコンサルする機会があった。

 私は、彼に、こうアドバイスした。
 --どうか、一度、本物の”上から目線”になってください。国民は、愚かで守っ
てあげなくてはいけない存在だと思うのです。
 たとえば、先生が、バスの添乗員だったとしましょう。バスの乗客がみな、団体行
動の責任と義務をしっかりわかっていて正しい行動を取れる人だと信じて疑わないで
いると「おしゃべりに夢中になって、出発時間に遅れてくるおばちゃん」とか腹が
立ってしょうがないでしょう?
 でも、バスの乗客は愚かで守ってあげなくてはいけない人たちだと思っていれば、
遅れてくる人も、ちゃんと並べない人も、ただ愛しいだけ。「みんな、大丈夫? あ
~、揃ってるね、よかった、よかった。よく帰ってきてくれた」という優しいことば
が出るでしょう。
”上から目線”はいけないことではないのです。リーダーたる者、自分がリーダーと
なったのは、百人に一人の高潔な資質を持っているからだと自覚したほうがいい。世
の中の標準は、自分よりもずっと怠惰で、人に流されやすく、自分と家族のことくら
いしか考えていないのだと思ってください。その人たちを、守ってあげたいと思うこ
とが、リーダーシップの始まりなのです--。

「お客様は、神様。」と言っているだけでは、いいものが提供できない。間違っていることは間違っていると正しい道に教育してあげようという気概をもたなくては、より良いものは提供できないと。

男性と女性で、脳の中にできているモデルが大きく違っているという。
男女の差もあると思うが、より論理的、より感覚的と言ってもいいかも知れない。
論理的に考えてしまう人と感覚的に考える人。この違いを著者は男女の差として。
夫婦の場合についてこう言っている。

 そこで、女性たちに贈る、最大のコミュニケーション・マナー。
 それは、「男性に何か提案したとき、いきなり弱点を突かれても、めげないこと」
である。
 男性は、問題解決型の脳なので、何か提案されたとき、その提案を受け入れたから
こそ、実現をめざして、いきなり問題点を突いてくる癖がある。「部長、こんな提案
があるのですが」「お前、この資材はそろわないだろう」みたいな感じ。
 夫も一緒である。「今度の連休に、○○に行かない?」「チケット取れないんじゃな
いの」
 みたいにね。
 なぜ、「いいね、一度行ってみたかったよな」という共感から入れないかなぁ、こ
の口は……と私はいつも嘆息する。けれど、優秀な男性脳のわが夫は、反射のごとく、
妻の気持ちに水を差してくるのである。
 というわけで、女性の皆さま、男に何か提案したときは、多くの場合、部分否定
か完全否定しかないと心得てください。そして、部分否定は、なんと肯定なのである。
受け入れたからこそ素早く問題解決したいだけ。女の気持ちに水を差したつもりは、
いっさいない。
 だから。ここで、「もう、けっこう」「あなたには、二度と提案してあげない」と
キレても、敵はきょとんとするだけなのだ。
 というわけで、上司にしろ夫にしろ、何か提案して、いきなり弱点を突かれたとき
は、心の中で一度喜ぼう。弱点さえ解決すれば、彼には反対する理由がないのだから、
流れはこっちのもんである。

弱点を突かれたら、すかさず、その弱点についてどうしたら解決できるかを相談する流れに持っていけば、話はよりスムーズにすすむという。

なんだか、騙されているような感じであるが、切り返し方としてこれが角を立てないうまい方法なのだろう。

著者によると、人間の脳は7年ごとにステージアップしていくという。
 生まれてから7歳まで、
 7歳から14歳まで
 14歳から28歳まで
そして、この後は、4×7の28年ごとになり、
 28歳から56歳
 56歳から84歳
 84歳から112歳
までの周期があるという。

 二十九歳から五十六歳までの第二ブロックは、膨大な数の回路の中から、要らない
回路をより分け、必要な回路を知るための二十八年間である。
 特に重要なのは、要らない回路を見極める作業だ。無駄なところに電気信号が行き
やすい状態では、ヒトは他者に翻弄されやすく、本質を見失ってしまう。要らない回
路を捨てることによって、人の思慮は深くなっていく。
 その、要らない回路を見極めるために不可欠なエクササイズが、「失敗」なのであ
る。失敗して痛い思いをすると、その晩眠っている間に、脳内では、失敗に使われた
関連回路の閾値(生体反応が起こるための最低値)が上がり、電気信号が行きにくくな
る。
 つまり失敗の数だけ、人は、失敗しにくく、判断に迷わなくなる。失敗が心に痛い
ほど、取り返しがつかないほど、脳への学習効果は大きい。失敗は、脳をよくするた
めに、人生で最も有効な入力なのである。
 歩き始めた子どもは、何度も転んで痛い思いをする。そうして、バランスのとり方
のセンスを身に付ける。人生も一緒である。痛い思いをしなければ、センスはよくな
らないのだ。失敗を避けていては、人生は先に進まない。

失敗しないと、経験値が増えないならば、より先に進むためには、失敗の数を増やす、失敗、再帰、試行、失敗などの回転をより速く回したものが先に行くと思われる。

100に一つくらいしか成功しないのであれば、100をやるのに、順番にやっていては100の時間がかかるが、平行して10を実行できるのであれば、100やるのに10分の1の時間でできる。

それが、資本の論理であり、組織での成功となる
個人でやる必要があるなら、平行して幾つか進めることになる。

ビジネスや趣味なら平行できるが、男女の中は、……

数々の失敗を乗り越えて、56歳を超えてくると脳の活動は、最高の状態になって、判断力がついてくるというのだ。先をみとおす力が最高レベルになってくるとのことだ。

さて、また夫婦の会話に戻ると

 というわけで、妻が「なんだか、腰が痛くて」と言ったときも、するべきは共感。
「あー腰が痛いのか、そりゃ、つらいな」と言うのである。
 それだけで、妻の脳では、ストレス信号が減少。ときには、痛みもちゃんと軽減す
る。
 なのに、「医者に行ったのか」なんて言われた日には、ストレス信号が倍増する。
「もんでやろうか」なんて言われるのも、余計なお世話。
 しかし、ゴール指向問題解決型の男性脳は、たいていは、どちらかを口にする。か
くして、妻はいつも不機嫌な生き物、となってしまうわけだ。
 だから、とにかく共感してあげて、と男性たちに説いて回っているのだが、男性た
ちからは、「そうやすやすと共感はできないよ」というため息が漏れる。
 たとえば、妻と隣の奥さんがトラブルになったとき、どう考えても妻が悪かったら、
共感なんてできないだろう、と。
 いや、そんなときこそ、篤く共感してやるべきなのだ。「きみの気持ちは、よくわ
かるよ」と。
「気持ちがわかる」と「でも、きみが悪い」は、女性脳の中では共存できる。「気持
ちはわかるよ。ほんとに、よく、わかる。でも、相手の言っていることも一理あるか
も」は、ありなのだ。
 男は、間違っている相手に共感することができない。正義感が強いからね。
 でも、ここでは、正義感を少し曲げてほしい。「気持ちがわかる」と言ってあげれば、
ストレス信号が鎮静化して、人の話を聞けるのだから。消火器で火を消すのと変わら
ない。

男性の多い職場での経験や、夫婦の経験から、こうした知恵がでてきたのだろう。
56歳の成熟期を迎えた著者の知恵である。

若い方は、参考にしたらいいと思う。人間関係を円滑に進めるには共感の姿勢が重要であると言われてきているが、相手が論理的思考が強いのか、感覚的思考が強いのかを判断して、感覚的思考が強いならば、まずは共感から入ることが、スムーズに交渉を進めるコツだと言える。






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