『もしもあなたが猫だったら?』

『もしもあなたが猫だったら? ~「思考実験」が判断力をみがく~』 竹内 薫 中公新書
人間の脳への興味は尽きないが、「人の脳の中で考えをめぐらすこと」は、現実の世界を変えるほどに重要な場合がある。

頭の中で考えをめぐらす中で、「もしも〇〇が△△だったらどうなるか?」というようなことを考えることを「思考実験」というらしい。実験といっても装置も材料もいらない。すべてが頭の中、脳の中で考えることで成り立つ。

こうしたことが哲学と言われるものの範疇にあるらしいが、何を考えるのかによって、学問の分野は変わる。科学分野であれば、ミクロの世界から宇宙の世界まで、人間が目で見れないくらい小さいものから見えないほど大きくて遠い宇宙のことまで含まれる。

重力と宇宙の話は、こんな話で始まる

 …… キーワードは「ゴル
ディロックス・ゾーン」。みなさん、この言葉
をお聞きになったことがあるでしょうか?
 ゴルディロックス・ゾーンのもとになったお
話は、たぶんご存じだと思います。「三匹のク
マさん」というお話です。「三匹のクマさん」
では、お父さんとお母さんと子どものクマがい
るんですね。このクマの一家が留守にしている
間、家に人間の少女が迷い込みます。で、三匹
分のスープが並んでいるのを端から味見して、
「ちょうどいいスープがあったわ」と三つめの
スープを飲んじゃう。それから三匹のベッドが
並んでいて、お父さんグマとお母さんグマのベ
ッドは大きすぎるけど、「三つめのベッドは私にぴったりだわ」と言ってもぐり込ん
で寝てしまう。お話自体は、女の子がそうやってさんざん荒らした家に三匹のクマが
帰ってきて……というものなんですけれど、その主人公の女の子の名前がゴルディロ
ックスというんです。
 で、このベッドは私にぴったりだわ、の「ぴったり」というのが、キーワードなん
です。欧米の人たちは、この「ぴったり」の意味で「ゴルディロックス」という言葉
を使います。だから、ゴルディロックス・ゾーンというのは、いうなれば「ぴったり
ゾーン」ということで、「人類が快適に暮らせる環境」ということなんです。

太陽系の中で、ゴルディロックス・ゾーンにあるのは、地球と火星。

太陽の大きさがちょっとでも大きすぎたり、ちいさかったりすると地球は今の環境にならず、人類は生まれてこなかったかもしれない。いや生命の誕生すらあやうい。

絶妙なバランスの中に存在するのは様々な力の比率や数値が関係していて
・核力 対 電磁力
・電磁力 対 重力
・宇宙の質量密度
・宇宙定数
・宇宙マイクロ波背景放射
・空間の次元
これらの数値が、違っていたらどんな宇宙になっていたのかと思考実験は続く。

思考実験という哲学に興味を持ったときのことを著者は次のように書いている。

 哲学というと、現代日本では、「役に立たない机上の空論」くらいにしか思わ
れていないマイナーな学問でしょう(残念!)。しかし、古代ギリシャでは学問
の花形だったわけですし、大学の理学部で博士号をとっても欧米では「哲学博
士」という称号をもらうことからわかるように、本来は、すべての学問の「根っ
こ」みたいなものなのです。
 たしかに、「真善美とは何か?」などと真顔で問われても困惑してしまいます
が、「人生いかに生きるべきか?」という問いであれば、少なくとも若き日には
真剣に耳を傾ける価値があるでしょう。
 かくいう私も、大学に入ったときは法学部(進学過程)にいて、将来は立派な
お役人になろう、などと考えていたのですが、一冊の哲学書との出会いが人生を
変えてくれました。それはフランスの作家・哲学者ジャン=ポール・サルトルの
『実存主義とは何か』(伊吹武彦訳、、人文書院)という本でした。
 薄いパンフレットのような読みやすい本で、どうやら、講演を本にまとめたも
のだったようです。それまで哲学といえば「役に立たない」と決めつけていた私
は、この本を読んで大いなる衝撃を受けました。
 それまで、私は周囲の求めに応じて人生を泳がされてきたようなところがあり、
自分が「操り人形」だというような苦しさを感じ続けていたのです。
 それが、人間は自分自身を未来に向かって投げる存在だ、というサルトルの教
えに目から鱗が落ちた気がして、私は法学をやめて哲学と物理学を勉強する決意
をしたのです。その後、作家という不安定きわまる職業を選んだのもサルトルの
哲学との出会いがなければ、なかったように思います。

哲学が著者の人生の方向を変えてしまったと。

哲学と言えば、高校の倫理社会でいろいろな社会思想家がでてきたり、大学で社会思想学というのがあったりで、科学との接点はあまりないものと思っていたが、この本を読んで、科学の新しい考え方というのは哲学から生まれるのかとあらためて感じた次第だ。

コンピュータ科学でこれから実用化の研究がすすんでいくのが量子コンピュータというものだ。この量子の振る舞いを考えると、テレポーテーションというのができる可能性が生まれる。

 テレポーテーションというのはSF映画の「スタートレック」などに登場する「転
送」のことです。何らかの特殊技術を用いて、遠隔地に物質や人間を運ぶものです。
現在では、小さな量子は転送することができます。人間のように大きくて複雑だと転
送はできませんが、それでも、「もしも人間が転送されたら?」という思考実験を行
うことは可能です。SFと物理と意識の思考実験へようこそ!

 テレポーテーションの話は二つあります。
 一つは最近もう実験的に検証されている量子テレポーテーションの話です。もう一
つは、そこから思考実験的に進めていって、たとえば人間がテレポーテーションでど
こかに飛んでいったときにはどうなるか、という話。特に人間の意識、これがどうな
るのか。うん? 人間の意識がどうして問題になるの? ちょっとわかりにくいと思
いますが、かなりおもしろい思考実験なので、後ほどご紹介します。

量子テレポーテーションの実際の実験は、2005年にウィーン大学のアントン・ツァイリンガーという研究グループが、光子のテレポーテーションに成功したという。

量子が、なんでテレポーテーションできるのかという細かい説明は、難しいのですっ飛ばして、量子がテレポーテーションできるなら、量子が沢山集まった人間でもいつか可能になるのではないかというのが、この思考実験である。

科学者の思考実験のなかにも悪魔というのがときどき出てくる。
悪魔というと星新一のショートショートによくでてきて、人間の想いを叶えてくれるが、最後には落とし穴がある。

電磁気学を確立したマックスウェルも「奇妙な小悪魔が熱力学の第二法則を破るのではないか」と友人に宛てて手紙を書いている。今ならメールで出すところだ。

 まず、熱力学の第二法則というのは、これは別名エントロピー増大の法則というも
のです。エントロピーが何かって言うと、ひとことで言えば「乱雑さ」です。
 ……略……
 生物の場合、エントロピーが大きくなったらどうなるかというと、死んでしまいま
す。死んだ状態というのは、ある意味、生物にとってはエントロピー最大の状態なん
です。
 エントロピーはいろいろな分野に登場するんですけれど、たとえば情報科学にも出
てきますね。情報科学では、エントロピーというのは、「情報のなさ」を意味します。
エントロピーというのは、バラバラで乱雑ということじゃないですか。その反対はカ
チッとしていて、整理整頓されているということで、それは情報があるということな
んです。だからエントロピーという概念は、情報という概念の裏返しなんです。ここ
は重要なので標語にしておきましょう。

 標語:エントロピーは「情報」の反対語

 こうなってくると、逆にわからなくなってきたかもしれませんが、エントロピーと
いうのは、エネルギーのようにわかりやすい概念ではないんですよ。だけど、エント
ロピーという概念がないと、物理学は立ち行かないんです。
 ここで熱力学の話になるわけですが、熱との関係でいえば、熱を加えると、ものは
バラバラになりますよね。だからエントロピーというのは熱とすごく関係する概念な
んです。で、熱力学の第二法則とは、つまり、エントロピーは常に増大し続けるとい
う法則です。

ここから、マックスウェルの小悪魔がでてくるが、箱の中に仕切りがあって、箱の両側にある分子を一定のエネルギー以上のモノを右へ、それ以下のモノを左へと振り分けていくと、いつか仕切りの右と左でエネルギー量の違う分子に分けられる。

エネルギーの量が大きいとは、温度が高い、エネルギーの量が小さいのは温度が低い。
箱の右左で温度差ができて、エントロピーが少なくなる!

という小悪魔を考えた。
現代なら、なんだ、エアコンの話か、という所だが、この時にエントロピーは小さくなってないのか?
という疑問である。

エアコンの場合は、外から電気エネルギーを加えて温度差を作り出しているわけで、このエネルギーを与えていることから、室内と室外だけでなく、電気の供給元まで入れると、エントロピーは増大しているということなんだ。

先の小悪魔の世界でいうと、分子を振り分けしている小悪魔の中にエントロピーが溜まっていくというのだ。

昨今は、ペーパーレスで、仕事机の上は、紙の書類なんかほとんど無くなってしまったが、

 昔、エントロピーを習ったときには、
 机の上に書類が溜まっていくと
 どんどんエントロピーが増大していって、
 最後にはエントロピーが一気に増える。

どうなったかというと、書類の山がついに平衡をたもてなくなって、山が崩れてばらばらになった。

ばらばらになるとエントロピーは最大になって、それ以上は崩れない。

人間は、それをまた片付けるためにエネルギーを注がなければいけなくなる。

 思考実験というのは、頭の中で考えていくことが中心なので、行動が豊富で活動的な人よりも、物静かで落ち着いた人の方が向いていると思われる。
様々なことに思考実験をしつづけていると、新たな法則の糸口を発見するかもしれない。








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