『AIと日本企業』

『AIと日本企業 ~日本人はロボットに勝てるか~』 榊原 英資、竹中 平蔵、田原 総一朗 中公新書ラクレ
「AIが発達すると仕事がなくなる」と思う人は、今までに何か新しいものが生まれると、旧来の製品が売れなくなって、旧来の製品を作っていた人は仕事がなくなったことを思い起こしてほしい

AIが発達すると、それによって新しい仕事がどんどん生まれるので、その新しい仕事をする人が必要になるのだ。

その新しい仕事は、今までの仕事のやりかたとは全く違う。今までよりももっと効率よく仕事ができるのだ。

工場が機械化されたことも、販売の仕組みが店頭販売や営業による対面販売からインターネットによるWeb販売に変わったように。

懼れることはない、新しい技術を使いこなす術を身に付けるようにしていけばよい。

個人レベルだけではない、企業も同じである。

田原 もう一つ、トヨタの研究所のトップがいっていた大きなポイントは、おそらく
15年後はトヨタは自動車メーカーではなくなるということ。いま、専用アプリを通じて
ハイヤーを予約・利用できるスマートフォン向けのサービスを提供しているUber
(ウーバー)という会社がアメリカにありますが、今後、このサービスは世界中で普及
するだろうと。Uberの普及で、いま、アメリカでは車の販売台数が落ちている。い
まのところ日本は、政府がタクシー会社に遠慮してやらないけれども、いまにUber
が日本でもサービスを開始したら、自家用車が要らなくなる。だから、トヨタは15年
後には自動車メーカーではやっていかれなくなるというんだ。
 では、どうするんだ。そこが問題だといっているわけ。
榊原 いや。もともとトヨタは自動車会社じゃなかったんだから。織物から入ってきた
んだから(笑)。
田原 豊田自動織機製作所ね。
 それからパナソニック。松下幸之助が生きていた頃は、東京にある他社が開発したも
のを大阪で大量生産すればいいという二番手商法で大きくなった。しかしもうそんなこ
とが通用する時代ではなくなってきたということで、研究所をシリコンバレーに置いた。
パナソニックの研究所のトップに、彼が東京へ来ていた時に聞いた。「なぜ、シリコン
バレーなんだ?」と。するとこういった。「松下は総合家電メーカーだが、総合家電メ
ーカーではやっていかれなくなる。日本は人件費が高いから、韓国や中国に負けてしま
う。これを説明するのに一番いい例が台湾の企業に買収されたシャープだ」と。
竹中 おそらくイノベーションのパターンには幾つかあって、それが変わってきたんだ
と思うんです。決まった物をできるだけ安く小さく軽くつくるという改良型のイノベー
ションの場合は、たくさん売ります。かつて、日本が高度成長を遂げた時にはまさにこ
の段階だった。
 ところが、いまのグーグルやアマゾンは、イノベーション型です。「The winner
takes all」(勝者が全部取ってしまう)という言葉があります。そのイノベーションの
時代には、やはり二番手では駄目なのです。

以前、「二番じゃだめなんですか?」と切り込んでいた政府の予算審議。

答えは決まっていたのに、誰も答えなかったことがあった。
もちろん二番じゃだめなのである。トップを目指すことが必要で、その為なら、何を削って、何に重点をおくか、それを決めなければいけなかった。

みんな、それぞれに重要なにどうやって順番を決めるか?
それは、全体をとおして中長期で示されるビジョンに合っているかどうかである。
トップに立つ(政権を取る)ならこのビジョンをつくらなければいけない。

日本とアメリカの法律のつくり方の根本的な違いは何か?

竹中 それは法風土の違いがベースにあるのです。つまり、成文法主義か判例法主義か
という違いがあるんですよね。日本は成文法主義で、国民生活のほとんどすべての分野
において成文法が存在します。一方、英米法系の国々では、裁判所の判例の集積が社会
を形成していく判例法主義なんですよね。ですから、日本の場合は、法律で書かれてい
るとおりにやらなければいけない。一方のアメリカは、まずやってみる。世の中は想定
されていないことがいっぱい起きるわけですから、やってみて問題が起きたら裁判を起
こします。事後裁判社会なんです。それが判例法主義です。
 成文法は大陸法ともいわれ、判例法というのは英米法ともいわれているわけですが、
最近は大陸法の本家のフランスもドイツも基本的には判例に基づくようになってきた。
日本だけが、ものすごく古典的な成文法主義をとっている。つまり裁判でほとんど判例
が出ない。成文法では想定されたことしか書けない。したがって、書いたことしかやっ
てはいけないことになるわけです。

法律に書いてあること、更にその下の政令、省令となっていくと罰則規定がだんだん緩くなっていく割に、詳細なことが決められていて、守らないと一番上位に戻って法令違反として罰せられる。

書いてないことは、やっていいのか悪いのか分からないから、お上に具申して確認する。そうなると回答がでるのに時間がかかる。
あることをしようと思ったら、一つの法令の下で問題がなくても、別の観点では問題がある場合もあり、チェックしないといけない項目がどんどん増えていってしまう。ということが起きている。

要らなくなった法律をどんどん減らさないと、政府や自治体の仕事は減らない。その法律を守らせるための仕事が残るからだ。
自治体側は、古くて不要な仕事はしなくても済むようにあれはやらない、これもやらないというのを決めて捨てていかなければならない。
決めるのは、広域でみている道府県がキーになる。省庁は、地域の実情なんかわかってないから、現場で救い上げる必要がある。

一方で、新しい物が生み出されると、何か制約を設けてルール化しないとやってはだめだという。そうなると法律ができるまで、新しいことができなくなる。ドローンなんかがそうだ。航空法で飛ばす飛行機に制限がかかっているようにドローンも早々に法律を作れとなって、いきなりすべてだめ、申請によって許可する。となった。いきなりその申請を認可する仕事ができたわけだ。事故が起きる前にということだが、これによる損失はいかほどになるのか?

日本はもっと判例主義の方向に舵を切らなければいけない。裁判員制度もあるのだから法律で決まってないことに、白黒つけなきゃいけなくなったら、裁判員を集めて議論して判例をつくればいい。裁判員は、しかるべき人もアサインできるようにしないといけない。

日本人の学歴は、昔に比べて相対的に高くなっている。出生数は減っているのに、大学生の定員は増えているから、おのずと大卒の比率は高くなる。単純に計算しても、出生のピーク時は1年に250万人いる中で50万人の大学生、つまり20%だったが、今や100万人に対して定員50万人だから50%が大学に入る。卒業率が同じなら、今は2人に一人が大学に行く。大手企業は大学生しか採用しなくなり、工学部でも学部卒でなく修士卒になって、国立大の学費は医学部と同じくらいかかるようになってしまった。

成績上位2割が入学式していた頃に比べると上位半分が入るようになると自ずとレベルは下がる。
さらに、日本の大学生は、あまり勉強していないという。だからなおさら海外に比べて大学のレベルが低くなる。

榊原 だって、日本人は、東大、京大に入るためには勉強するけれど、入ったら勉強し
ないもの。
竹中 榊原さん、元ハーバード大学教授のヘンリー・ロソフスキーを覚えていらっしゃ
るでしょう。彼は経済学者で、大川一司と共著の論文(『日本の経済成長 20世紀におけ
る趨勢加速』)を書いたり、一橋大学に留学していたから日本のことも詳しい。その後、
彼はハーバード大の学長になったわけです。ボストンにいる時、よく食事をしたのです
が、「東京大学は、ハーバードから見ると東京にある大学以外の意味はない」と会うた
びにいっていました。そのとおりだと思います。それはなぜかというと、日本の大学に、
マネジメントという概念がないからなのです。
榊原 そういうことですね。
竹中 大学は自治なのです。オートノミー。自分で治めるのです。
榊原 だから、教授会が全部決めているでしょう。アメリカの場合は、教授以外にマ
ネジャーが別にいて、それでマネージしているわけです。
竹中 そう。マネジメントのシステムがあるのです。しかし、マネジャーのいない日本
の大学で何が起こるかというと、たとえば自分より優れた研究者をとらないようなケー
スが出てくる。だって、自分たちで決めるんだから。
榊原 しかも教授会というのは、会社でいえば労働組合だから。要するに、労働組合が
みんな決めているという話です。
…… 中略 ……
田原 さっきから何度も名前があがっている松尾豊なんか、人工知能に関しては第一人
者であるにもかかわらず、東大で教授になれない。
竹中 しかも特任教授なのです。期限付きの契約の准教授。

従来の工学部のエンジニアリングの人たちがメインストリームを押さえていて、年功序列、終身雇用で枠がないという。

人工知能が、これからの世界でどれだけ重要な研究課題になっているのかに関わらず、こうした状況では、いい頭脳は、海外にみんな行ってしまうわけだ。

日本の大学は、前はアジアの良い人材も留学してきていた。しかし、今はもう、アジアからやってくるのは、トップ集団ではないだろう。

それでも、ノーベル賞を取るほどの人材はいる。

田原 この間、京都大学でiPSの研究をしている山中伸弥さんに会った。彼はカリフ
ォルニア大学サンフランシスコ校のグラッドストーン研究所に留学したんですが、研究
所の所長がフォルクスワーゲン(VW)に乗っていた。その研究所長は「これからの研
究者はVWが大事だ」というわけ。それはフォルクスワーゲンではなくて、「V」はビ
ジョン、「W」はワークハード。日本の研究者はみんなワークハードをやっている。し
かしビジョンはあるかといわれて、それでひっくり返ったんだって。それで彼は絶対に
iPSの研究をやりとげようと決心した。みんなに「俺はiPSをやるぞ」といったら、
「何を考えているんだ」と笑われた。iPSをやっても成功率が低いし、運良く成功し
ても50年100年先だろうと。しかしビジョンを持てと教えられたことを思い返して、
やらなければいけないと思ったんだって。どうですか。
竹中 それは企業も同じです。伸びる会社、つぶれていく会社、どこに違いがあるかと
いえば、結局、ビジョンを示して力強く引っ張っていけるリーダーがいるか。そういう
リーダーを社長に選べているかどうかなのです。大きな組織になると、ある確率で変な
人がいるのは仕方ないにしても、社長や取締役で変な人が出てくるのは致命的です。
田原 僕は40代、50代の頃、いろんな業態の企業を取材した。取材してはっきり
分かったのは、大きな仕事、思い切った仕事をやった社員は最高でも常務までしか出世
できないということ。なぜなら敵が多いから。
竹中 そうなんですよ。
田原 無難なことをやったやつが社長になる。
竹中 だから、結局、リーダーの選び方の問題なのです。

トップマネジメントがビジョンを示し、その方向にあっているかどうかが基準であり、合っているビジネなら投資してどんどん進める。合ってないものは、外に出して、選択と集中をする。それが、トップの役割。

他の日本企業について

竹中 小松製作所の話、ご存じですか? いままで土地に土を集めて土台をつくる作業
をするのは一日かかったけれども、いまは三時間でできるようになった。なぜかという
と、そこに人工知能が使われているからなんです。どうするのかというと、最初にドロ
ーンを飛ばして、現場の立体写真を撮る。どんなに平らに見える土地でも、わずかに傾
斜やうねりがある。それを人工知能に計算させて、この土を削れという指示が出る。そ
うすると、ブルドーザーを何時間稼働させなければいけないという予約がすぐに入る。
 その結果、測量技師が一万人余ってしまった。測量技師がいなくても、女性の事務員
さんでもできるようになったから。これは全国千数百ヵ所でやっているらしいのです。
 問題は仕事を失ったかにみえる測量技師さんのこと。「失業したんですか」と聞いた
ら、いまは仕事が増えているし、測量技師も高齢化して辞めていっているので、失業者
は出ていないというわけです。そういう変化は、私は今後、いろいろな職場で起こると
思います。
榊原 ロボットなり人工知能なりが仕事をしてくれれば、人間はその分浮くわけです。
そうすると、労働時間を減らしたり、ほかのことをやるという話になってくる。遊ぶ時
間も多くなってくるわけです。だけど、それもまた重要なことです。いままでと同じよ
うにルーティンワークをしている人間がいなくなるだけの話です。

人工知能がよい仕事をしてくれれば、人間がやることは、より高度なことかルーチンにないこととかになる。

過去の膨大なデータを使って訓練された人工知能は、訓練されなかったことに対する判断が弱くなる。ビジョンに従って判断するなんてまだできないのだ。AGIができるまでは。

最後に田原氏が、松下幸之助さんから経営者を選ぶときの基準は何か問うた答えが紹介された

「難しい問題にぶつかったときに、それを面白がれる人間だ」

これが決め手だという。経営者として様々苦労をしてきた中からでてきた言葉は重い。
経営者が困難に苦労している姿を従業員が見たら、士気は落ちてしまう。面白がって取り組んでいれば、従業員もついていけるということもあるだろう。

「ロボットに勝てるか」という問いかけはあまり意味はない。
「人間は、コンピュータに計算スピードで勝てるか」という問いと同類のものだから。
コンピュータは、大量に、高速に処理できる。だから人間がやらなくても計算してくれるので使う。

ロボットも同じ、ロボットと同じ土俵で人間が競うことに意味はない。
ロボットをいかに使って、人間が実現したいことがどれだけ早く、正確に、精度高く、できるかである。
ロボットにホテルを運営させたかったら、「変なホテル」ができた。
人間がやることは、細かい作業だ。このホテルでもベッドメーキングは外注して人間が対応しているという。
床の掃除はロボットがやっていてもだ。
しばらくは共存していくだろう。

何百年か、何千年かロボットが自分で自己修復できるようになったら、地球から宇宙へ飛び出すことができるかも知れない。
その場合、そうとう規模の宇宙船となり、その中で人間が生活していくということもあるかも知れない。






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この記事へのコメント

2019年07月27日 10:50
こんにちは。

AI発達が目覚ましいですね。
新しい仕事もいっぱいできますね。
でも、今まで人がやってことがAIがやってくれて、古い仕事のやり方は減りそうですね。
2019年07月27日 14:59

(気持ち玉代わりです)
2019年08月01日 11:36
 ナイス 
気持ち玉代わりです
コメ返はお気になさらないでくださいね。