『人工知能の経済学』

『人工知能の経済学 ~暮らし・働き方・社会はどう変わるのか~』 馬奈木俊介(編著) ミネルヴァ書房
タイトルから予想していた内容とは、ちょっと違っていました。

もっとわかりやすい本かと思っていましたが、研究論文を集めて、体系的にまとめたものでした。
学問的探究心のあるかたや、研究者であれば、読みなれた文体でしょうが、一般書籍しか読まない人にとっては、なかなかハードルの高い書物です。

まずは、仕事の自動化と雇用の関係について

 以上をまとめると、仕事の自動化が雇用を奪うのか、創出するかは、Frey
and Osborne(2013)が予測したほど極端な事態には陥らないとする見方の方
が多い。Arnz et al.(2016)は、テクノロジーが実際にどこまで実用化される
かと、研究者が述べる可能性には乖離があること、労働者が新たなテクノロ
ジーを学ぶことで、自動化に関連する新たな仕事に適応できる可能性が十分に
あることを考慮した上で自動化と雇用の未来を考える必要があるとしている。
ただし、教育レベル間の格差が増大し、低スキルの労働者に対する教育訓練や
時間のコストがテクノロジーの進歩を上回る可能性があることも同時に指摘し
ている。また、機械が苦手とする相互作用、環境に対する反応の柔軟性、適応
力、問題解決能力は、Googleの自動運転や人工知能のWatsonなど、環境の
整備や機械学習によって着実に機械化の試みが進められていることも事実であ
る(Autor,2015)。雇用創出を予測するレポートでも、基本的にはすべての職
業で雇用が伸びるわけではなく、雇用が増える業種と減る業種が出現するとい
う結果を報告している。具体的には、自動化技術を提供する業種(IT、データ
インテグレーション、研究開発など)は雇用が増大するが、製造、物流、品質
管理、メンテナンス、製紙・印刷業などは雇用が減少することが見込まれてい
る。[P24~25]

過去にも、機械化や自動化によって仕事の人員の再配置や、業種間の移動がされてきましたように、今後も続くということです。

ルーチン作業により近いものから、代替されてって、必ずしも人間が介在しなくてもよい部分においては、どんどん自動化されます。

既に、小売業界では大手のスーパーは無人レジとかセルフレジが増加しています。人がゼロになるわけではなく、セルフの部分と店員が対応する部分が混在して共存している状態がしばらく続くでしょう。
また、お客様の方が、だんどん慣れてくると無人化率が高くなることでしょう。

次の章はAIが活用できていない理由です。結論を引用すると

 最初の疑問である「なぜ多くの企業がAIを経営に活用できないのか」に答
えれば、多くの企業において、本章で述べたイノベーションを取り入れる要因が
まだ満たされていないということになる。
 もちろんこれまでの議論は、過去のデータに基づいた先行研究に依存してお
り、今後も同じ法則があてはまることが保証されている訳ではない。AIの技
術的進歩はさらに進み、人間に代わる汎用的能力をもつAIや生物に近い適応
能力を持つ人工生命の開発も進むのではないかと言われている。このような技
術進歩にも耐え得るAI経営の指針はあるのだろうか。本章の結びとして、計
算機科学の第一人者であるアラン・ケイの言葉を引用したい。

"The best way to predict the future is to invent it"「未来を予測する最も
優れた方法は、未来を創り出すことだ」(Greelish,2013)
[P64~65]

「意志あるところに、未来は開ける」なんて言葉も誰かが言っていたように思います。

未来を描き出して、そうなるように努力を続けていくと、そういう世界になっていくということです。
自分がこうなりたいと未来を描いて、そこに向かって努力していくと次第にその未来に近づいていくようにです。
企業の活動も所詮は人間の活動ですので、企業のリーダーや組織が、こういう世界が欲しいと思い描けばいつかそれが実現できます。
先日ジョブズの言葉を紹介したように、イノベーションがおきるのです。

第7章は車の自動運転についての考察

 日本政府も2015年には「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定し、
「2018年を目途に交通事故死者数を2500人以下とし、2020年までに世界で最も
安全な道路交通社会を実現する」ために「車の自律系システムと車と車、道路
と車との情報交換を組合せ、2020年代中には自動走行システムの試用を開始
する」としている(内閣府2015)。経済産業省製造産業局長と国土交通省自働
車局長も自動走行ビジネス検討会を2015年2月に設置した。
 今後自動運転車が急速に普及するとしたら、日本の消費者のうち、どのよう
なタイプの人が自動運転車を購入するのであろうか。本章では、大規模なイン
ターネットアンケートを利用して、消費者の自動運転車に対する潜在需要を推
計し、さらに支払意志の傾向別にグループ化することによって、誰が自動運転
車の購入に積極的か/消極的かを明らかにする。これにより日本における自
動運転車の普及の前提となる条件を予測する。[P207]

自動運転車を作るメーカー側の発表として、海外では、BMW,Audi、Ford、Googleなどが概ね2025年頃にレベル4の車を一般道路で走れるようにしたいとしていますが、このスケジュールも毎年、徐々に早まっているようでもあります。

分析の結果については、自動運転を歓迎する人たちと、懐疑的な人たちが少なからずいるということ。現在、免許証を持っているひとだけでなく、持ってない人も自動運転車を持つ可能性があるということです。

など様々な要因が考えられます。

アンケートをインターネットで行っているので、現在免許を返納して、それでも、車を必要としている高齢者などは回答数がすくないので、この世代に大きな需要があるかもしれません。

最初の自動運転車は、高級車でエコカーからだろうと推定されていますが、エコカーはその通りだろうと小生も思います。
高級車の次は一気にリッターカークラスまで下げて、大量に供給される可能性もあり、無人タクシーとか、無人小型バスのようなのが地方から普及していくのが必要なのだろうと思います。

AIによる自動化の採用について、忘れていけないのは、IT導入をしてきた過去の歴史です。

 では、日本企業におけるITの導入はなぜ遅れたのか。ITの導入を含む新
技術の導入メカニズムに関する伝統的な研究では以下の四つの効果が主に取り
上げられている。①Rank effect:企業規模、企業年齢など企業固有の特徴が
新技術導入からの利益を決定する、②Stock effect:新技術導入からの利益は
先行導入企業数の増加とともに減少する、③Order effect:新技術導入からの
利益は導入の順序に依存する、④Epidemic effect:新技術導入は企業が属して
いる産業や地域、経済圏などの特徴(例えば競争の程度、技術知識の伝播の程度な
ど)に影響される。
……中略…… 企業固有の特徴を強調するRank effectと産業や地域の影響に注目する
Epidemic effectが支持される結果を得ている。[P335~336]

企業規模が大きいほど、企業年齢が若いほどIT導入に積極的であるといいます。

日本では、従業員千人未満で、年数が35年以上の企業が多いのでIT導入が進まなかったと言ってます。

一定以上の規模がないとIT投資をまとめてできなかったり、企業年数が長いと既存のビジネスモデルを変革するのに抵抗勢力が大勢いてなかなか進みません。

ベンチャービジネスの多くは、ITを活用している企業が多いので、少人数で効率的な経営になりますので、少しでも、そういうビジネスが増えることに期待したいです。





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この記事へのコメント

2019年08月11日 16:00
こんにちは

人工頭脳の本、難しそうですね。
でも興味あります。
人工頭脳の事は知っておきたいです。