『ゆっくり十まで』

『ゆっくり十まで』 新井 素子 角川文庫
先週は、新井素子によって編纂されたショート・ショートを紹介したが、今週は本人の作品集だ。

15編収められている。前回も述べたが、ショート・ショートを引用してしまうとネタバレしそうなので、軽めにしておく。

表題作の『ゆっくり十まで』このフレーズを見て、最初に思うのが、

お風呂に入って、ゆっくり十まで数えて、あったまってね。というシーンだ。
よく親が、子どもに言い聞かせるフレーズである。そんなお風呂がテーマだ。

恋愛というか、恋というかそんなところから始まって、人と人の話から、神様みたいな、妖怪みたいなのとの話になる。

『王妃様とサミ』なんかは

 確かにサミは魔物です。
"寂しい"っていう心をもっているひとがいると、必ずやってきて、寂しいひとに寄
り添ってしまう魔物。寂しい心が大好きな魔物。でも、サミが寄り添ったひとは、サ
ミが来る前より、ずっとずっと寂しくなってしまうんです。うん、そういう魔物。寂
しさが大好きで、そして、寂しさをより増幅させてしまう魔物。

後半は、人ではないモノが主人公になっていく。

『百二十年に一度のお祭り』
読み始めて、最初の1ページ目で、この主人公は竹か。とわかる。

竹と120年と聞くと、さては、あのことかなと思って読み進むと、やはりである。
丁寧に物語の途中に竹の生態の解説まで入っているので、竹という植物が他の木のたぐいとはちょっと違っているのが分かって面白い。

最後の方は
・猫が主人公なんて、ままあるのだが、この猫は変な能力を持っている
・体重計が主人公
 なんてのがでてくる。スポーツクラブの体重計が主人公。

 さては、新井さん、スポーツクラブに通ってるな。と推測したら、あとがきでそのことが書かれていた。
なるほど、ネタに困ったらスポーツクラブで汗流して、シャワー浴びて気分転換しながらネタ探ししてるんだ。

新井さんのSFには、時々日常ありそうな場面がでてくる。
たいていは実際に新井さんが経験していることから場面設定されているので、このシーンは、きっとあれやってるのかななんて想像しながら読むのも楽しい。

初期のSF作品も多数読んできたが、主人公は、結構はちゃめちゃなので楽しいのだ。






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