兎夢のつれづれ日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 『DEEP THINKING ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』

<<   作成日時 : 2018/01/27 23:02   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 18 / トラックバック 0 / コメント 0

『DEEP THINKING ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』 ガルリ・カスパロフ 日経BP社
人工知能の歴史を語ると必ずでてくるのが、コンピュータチェスが初めて人間のチャンピオンを破った時の話である。

1997年のIBMのディープブルーとの闘いである。この戦いの顛末をチャンピオン本人が語ったのが本書である。

本書の冒頭で著者は次のように語っている。

 プロとしてのキャリアのなかで、チェスが自分の人生の、あるいは世界の大きな流れのどこに
位置づけられるかを一歩身を引いて考えることもあったが、時間をかけてそうした問題を掘り下
げるチャンスはほとんどなかった。2005年にプロのチェス界から引退して初めて、思考につ
いて深く考え、チェスというレンズを通して生活の1秒1秒を決める意志決定のプロセスを探求
するようになった。
 本書を書くうえで基盤になったのは、チェスを職業としていたあいだに起きた例外的な出来事
だ。トッププレイヤーとして過ごした20年のほとんどを使ってコンピューターとの対決を行って
きたことで、私はチェスを競技ではない別のものと考えるようになった。次々に登場する新たな
世代のチェス・マシンとの戦いは、神聖な科学的探究に参加し、人類と機械の認知機能の核心に
位置し、人類代表の旗を掲げることを意味した。

カスパロフ氏は、強いチェスマシンとの戦いによって、何かを学べる。知性とは何かを考えることができるという。

単にチェスが指せるというだけではなく、機械が考えることができるのか、チェスマシンがどんどん強くなっていくにつれて、更に探求したくなってくるのだろう。

人工知能の開発にあたっても、ニューロンをスイッチに、大脳新皮質を記憶装置に対応させていくだけでは足りず、生物学上の根拠が必要になってくるという。

 その違いを浮き立たせるために私がよく使う言葉が”理解”と”目的”である。まずは”理
解”のほうから説明しよう。ワトソンのように自然言語を理解するように設計されているコンピ
ューターは、人間なら瞬時にわかることであっても、その意味を理解する文脈を作るのに数百万
以上の手がかりを探らなくてはならない。たとえば"the chicken is too hot to eat"という単純
な文章は、「そのニワトリは熱が出て食欲がない」「そのチキンは熱すぎて食べられない」など複
数の意味に解釈できる。だが、この文章自体がもともと多義的だとしても、人間は話し手が意味
するところを誤解することはまずない。話の前後関係から意味がおのずとわかるからだ。
 適切な文脈を当てはめることは、人間には自然にできる。本人が常に意識して情報を整理せず
とも、脳が膨大なデータを処理してくれるおかげだ。自分では努めて何もしなくても、呼吸のよ
うに苦もなく、脳が裏方としてこの仕事をこなしてくれる。腕の立つチェス・プレイヤーならひ
と目で、あるタイプの局面ではあるタイプの指し手がよいとわかるし、一般の人でも見た目でこ
のお菓子はおいしいと見抜くものである。むろん裏方たちの直感が外れて、勝負が不利な形勢に
なったり、お菓子がさほどおいしくなかったりすることもある。そんな目に会えば、次に似たよ
うな状況にぶつかったときは意識がもう少ししゃしゃり出てきて、直感が正しいかどうかを吟味
するはずだ。

人間は、過去の経験を直感的に適用して判断することができる。

これは、記憶と記憶のつながりが、非常に蜜につながっているために、機械の記憶よりも取り出し易くなっているのではないかと思われる。

ニューラルネットワークにしても、まだまだ人間の脳のような配線には程遠いということだろう。

コンピュータの判断ミスを、カスパロフ氏は、映画スターマンの運転のしかたになぞらえた。

スターマンが友人になった女性の運転をまねて、女性の代わりに運転していたときに

  …… スターマンが交差点で猛スピードで走り抜け、避けよう
とした車が事故を起こす。それを見た友人のジェニーが彼を怒鳴りつけ、次のような会話になる。

 スターマン:大丈夫か?
 ジェニー:大丈夫かですって? どうかしてるんじゃないの? もう少しで、殺されるとこ
   ろだったわ! 私の運転を見ていたと言ったじゃない。ルールはわかったって言ったじ
   ゃないの!
 スターマン:ルールはわかっている。
 ジェニー:じゃあ、言わせてもらうけど、信号は黄色だったのよ!
 スターマン:君の運転をじっくりと見ていた。赤信号で止まる、青信号で進む、黄信号でと
   ても速く進む。
 ジェニー:私が運転したほうがよさそうね。

 まさに、どんぴしゃり。グランドマスターの見事な技巧をまねるように教えこまれたチェス・
プログラムがクイーンを捨ててしまったように、観察するだけでルールを学ぶと、とんでもない
結果を招くことになる。地球を初めて訪れた異星人と同じく、教えられるか自分で作りだす以外、
コンピューターは知識も常識も持っていない。スターマンは間違いを犯したわけではなく、黄信
号で加速するにはもっとたくさんの判断材料が必要であることを理解するのに十分なデータがな
かっただけなのだ。数千兆バイトものデータを利用するワトソンや、数十億もの例文が底なし沼
のようなデータベースに注ぎこまれるグーグル翻訳でさえ、ときには突飛な結果を導きだす。科
学の分野ではよくあることだが、間違えたときのほうが、うまくいったときより多くを学べるも
のだ。

人間は、間違えた時に、何故間違えたのかを理解しようとする。間違えた理由が分かれば、次にどうすればいいかを理解し、次はうまく対処できるようになる。

この理解するという事が重要なのだ。コンピューターは、間違えたことを試行錯誤の一つの例としか記憶しない。

だから次に間違わないためには、どうすればいいかの手本を何度も繰り返し覚える必要がある。

コンピューターがどういうふうに考え、どういう戦術を選んでいるかカスパロフ氏は言う

 チェスの長い歴史に燦然と輝くプレイヤーたちでさえ、1993年まではコンピューターがあ
たりまえのように繰りだす複雑きわまりない戦術的プレイの洗礼を受けたことはなかった。対戦
相手が人間なら、盤上で何が起きようと、その対処の仕方には自分とおおむね同じ限界があるの
がわかっている。たとえば私はこれまで、スピーディな戦術的プレイで名高いインドの国民的英
雄、ヴィスワナータン・アーナンドを除けば、ほかの誰よりも指し手を読む力があると思ってい
た。自分の指した手の結果がどうなるのかよくわからないときは、対戦相手にもわからないはず
だといつも信じていた。頭のなかに築いていたそういうバランスが、強いコンピューターと戦っ
たときに一挙に崩れ去った。コンピューターはチェスがうまいだけではなく、戦い方がまったく
違うのだ。

カスパロフ氏は、こんなことも言っている。

 私はチェス・コンピューターのことを考えているうちに、このセミナーのことを思い出した。
私はセミナーで、コンピューター科学の先駆者で、1966年に米国コンピューター学会(AC
M)主催のチューリング賞の初受賞者になったアラン・パリスの言葉を引用したスライドを使っ
たからだ。1982年に発表したプログラミングに関する有名な警句集のなかで、パリスは「最
適化は進化を妨げる」と書いている。この言葉に目を留めたのは、一見矛盾した表現に思えたか
らだ。何かを改良することが、どうして進化を妨げるのだろう。進化それ自体が着実な改良の一
形式ではないのか?
 だが、進化は改良ではない。変化することなのだ。変化は普通、単純なものから複雑なものへ
という道筋をたどるが、その鍵となるのは多様性を増すことであり、物事の本質が変わることな
のだ。最適化を行えばコンピューターの処理速度を上げることはできるが、本質を変えたり、新
しい性能を生みだしたりはできない。パリスはプログラミング言語の”進化系統図”を使って、
ニーズに合わせ、新しいハードウェア環境に適応することによって進化が進んでいくことを示し
た。野心的な目標を掲げることこそ、進化への原動力になる、とパリスは説いた。そうした目標
は、既存のツールや手法では実現できない。思いがけないニーズと新たな課題を生みだすからだ
という。

これは、イノベーションのジレンマの話にもでてくる。

従来技術の延長が、最適化であり、進化がイノベーションとなる。

進化は、従来技術の最適化の延長にあるのではなく、全く別の所からやってくる。

そして、新しい適応領域を切り開いていくのだ。

さらに別のの観点から、現代人は新しいモノを手放せなくなりつつある

 現代人はあらゆる場面で技術を使って生きている。そしてここ数十年のあいだに、技術のほう
は人間を必要としなくなってきた。人間のまねをするところから始めた機械は、自動化の波によ
って、人間にはできない作業をするまでになった。重いものを持ちあげるのはもちろん、繊細な
作業もお手のものだ。計算をしたりデータ分析をしたりといった知的な作業もできる。そして、
人間が簡単な作業をすべてコンピューターやスマートフォンにまかせるようになったいま、機械
は、記憶のような基本的認知機能を補ってくれるものへと変わりつつある。iPhoneの登場
によって誰もがスマートフォンを持つのがあたりまえになるまえから、”技術が人間の脳に与え
る影響”は重要なテーマだった。

そうした中で、18歳で世界4位にのし上がってきたカールセンのマシンの使い方にカスパロフ氏は感心している。

マシンはあくまでも道具であり、マシンの分析を完全には信じていなく、自ら考えて判断していた

 このカールセンの姿勢を、何かを思い出すことができずに反射的に携帯電話に手を伸ばすこと
と比較してもらいたい。そんなとき、あなたは一瞬手を止めて、自分の力で思い出せないか試せ
るだろうか? あなたは練習中の世界チャンピオンではないかもしれないし、映画にまつわる豆
知識や友だちのメールアドレスを調べるだけかもしれないが、たまには認知力を鍛える練習をし
てみるのも悪くない。日頃から知識を貯めたり、思い出したりしておくと、創造力を働かせると
きに役立つ。脳は無意識のうちにあらゆる情報をとりまとめて見識とアイデアに変えてくれるの
だ。書店をぶらつくことはあまりなくなったかもしれないが、ときには、インスピレーションを
求めて思考をさまよわせてみるといい。


人間の細胞は、日々新しく作り直されている。脳の配線も同じで、日々変更されているのだ。

使わなくなった筋肉が減っていくように、脳もトレーニングをしないと次第に退化していく。

認知症にならないためにも、新しい刺激は必要だし、条件反射的に使うだけでなく、能動的に新しいものを考えるということは健康長寿のためにも必要だろう。






テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 18
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『DEEP THINKING ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』 兎夢のつれづれ日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる